AIが描いた絵は芸術?哲学と美学で考える「AIアート」の今

AIの基礎知識

「AIが描いた絵って、本当に『芸術』と呼べるのかな?」

最近、AIが作った美しい画像や音楽に触れる機会が増えました。 まるで人間が作ったかのような作品を見ると、こんな疑問がわいてきますよね。

実はこの問題、昔、カメラが発明された時の状況とそっくりです。 「機械が写すだけで、芸術じゃない」と言われた写真が、今では立派な芸術の一分野になりました。

この記事では、「AIアートは芸術か?」という問いを、哲学や美学の視点から、中学生にも分かるように、やさしく解説していきます。

そもそも「芸術」ってなんだろう?

AIの話をする前に、一度「芸術」とは何かを考えてみましょう。

美術館にある絵画や彫刻を思い浮かべてください。 そこには、作者が「こんなことを伝えたい」「これを見てこう感じてほしい」という気持ち、つまり**「意図」が込められています。 レオナルド・ダ・ヴィンチが「モナ・リザ」の不思議なほほえみをどう描くか、頭をひねったように、芸術には作り手の「創造性」**が欠かせません。

また、作品から、喜びや悲しみ、驚きといった感情が伝わってくることも大切です。 哲学や美学の世界では、こうした「作者の意図」や「創造的な表現」があるからこそ、作品は「芸術」と呼ばれる、と考えられてきました。

ここがポイント: 伝統的に、芸術は作者の意図や創造性が込められたものと考えられてきた。

AIアートが「芸術じゃない」と言われる理由

では、なぜAIアートは「芸術ではない」と言われることがあるのでしょうか。 主な理由は2つあります。

理由1:AIに「創造性」はあるの?

一つ目は、AIが本当にゼロから何かを生み出しているわけではない、という意見です。

AIは、インターネット上にある膨大な数の画像や文章を、いわば「お手本」として学習します。 そのお手本の組み合わせ方を変えて、新しい作品を生み出します。

これは、独創的な作品をゼロから作るというより、たくさんのパズルピースを上手に組み合わせる作業に似ています。 そのため、「AIは模倣しているだけで、本当の意味での創造性はない」と考える人がいるのです。

理由2:「作者」はいったい誰?

二つ目の理由は、「作者は誰か」という問題です。

例えば、あなたが画像生成AIの「Midjourney」に「夕焼けの海の絵を描いて」と指示(プロンプト)したとします。 この場合、作者はあなたでしょうか? それとも、指示をもとに実際に絵を描いたAIでしょうか? あるいは、AIを開発したプログラマーでしょうか?

2022年、アメリカのコロラド州で開催された美術品評会で、ジェイソン・アレン氏がMidjourneyで制作した『テアトル・オペラ・空間』という作品が最優秀賞を受賞し、大きな話題になりました。 彼は「芸術家がAIという道具を使っただけだ」と主張しましたが、「ボタンを押しただけだ」という批判も多く集まりました。 このように、誰が本当の作者なのかはっきりしない点が、AIアートが芸術と認められにくい一因になっています。

ここがポイント: AIには人間のような創造性や意図がない、そして作者が誰か曖昧だという批判がある。

AIアートが「芸術だ」と言える理由

一方で、「AIアートも立派な芸術だ」と考える人たちもいます。

道具としてのAI、レシピとしての指示(プロンプト)

カメラが光を記録する道具であるように、AIもまた「新しい表現を生み出すための道具」だという考え方です。 AIは、何でも描ける超高性能な絵の具セットのようなもの。 そして、どんな絵を描かせるかの指示(プロンプト)こそが、絵の具の使い方を決める「レシピ」にあたります。

どんなテーマを選び、どんな言葉でAIに伝え、最終的にどの作品を選ぶか。 その一連のプロセスには、人間の**「意図」「美意識」**がはっきりと表れます。 有名な大規模言語モデル(LLM)であるChatGPTやGemini、Grokに文章を書いてもらう時も、どんな質問をするかで答えが変わりますよね。 それと同じで、AIアートもまた、人間がAIという道具をどう使いこなすかという「創造性」が問われるのです。

AIが生み出す「思いがけない美しさ」

また、AIは時々、人間の想像をこえるような、思いがけない作品を生み出すことがあります。 人間が意図した部分と、AIが生み出した偶然が組み合わさることで、新しいタイプの芸術が生まれるのではないか、と期待されています。 これはまるで、ジャズの即興演奏のように、予測できない面白さがあると言えるかもしれません。

ここがポイント: 人間がAIを道具としてどう使うかに創造性が宿り、新しい芸術の可能性が広がる。

人間と可愛らしいロボットが、一枚のキャンバスに向かって一緒に楽しく絵を描いている、明るい色合いのイラスト。

まとめ:AIとアートの未来を考える

AIアートが芸術かどうか。この問いに、まだ世界共通の答えはありません。

著作権の問題も複雑です。 日本では、AIが作ったものに人間の「創作的寄与(クリエイティブな関与)」があれば著作物と認められる可能性がありますが、世界ではまだ議論が続いています。

AIアートは、私たちに「芸術とは何か」「創造性とは何か」を改めて問いかけています。 それは、脅威ではなく、新しい表現の世界への扉なのかもしれません。

あなた自身がAIで作品を作ってみると、また違った考えが浮かぶかもしれません。 ぜひ、AIという新しい絵筆を手に取って、あなただけの「アート」を探求してみてはいかがでしょうか。

ここがポイント: AIアートは「芸術とは何か」を私たちに問い直させる、新しい時代の表現ツールである。

タイトルとURLをコピーしました